たとえば、介護サービスを受けていた日中独居の高齢者が、新しい判定により介護度の軽い「要支援」となった場合、新介護予防プランの中で福祉用具レンタルの利用が制限される。限られた中で何を優先するかにより、状態が悪くなったり良くなったりするのである。ケアプランの立て方により、その後の状況が変わった極端な事例を紹介する。
事例1
90才代の男性、「要介護1」から「要支援1」になり、ケアプランを変更。日中一人であることと男性であるということで、30分ずつ週2回の昼食づくりのヘルパー利用を優先した。そのため、これまで借りていた福祉用具としてのレンタルベッド代が出せなくなり、布団を利用することとなった。結果として、横になっていることが多くなり身体機能が衰え、起き上がりがスムーズに行えなくなり、転倒して骨折・入院となった。
事例2
軽い脳梗塞の後遺症で右半身マヒがある80代後半の女性。「要介護1」から「要支援1」になる。プランではヘルパーの利用をやめて、福祉用具の「4点杖」を借りることとした。室内での行動が広がり、自費で週1回2時間の家事援助を頼むことで、今まで以上に自立した生活ができるようになった。
決められた枠の中で自立した生活を支援するために何をどのように選ぶかは、利用する人の生活実態をしっかりと見極めた上で判断する必要がある。今後の介護予防のケアプランの中に、自立のための福祉用具として何が必要かよく考えることも重要だと実感している。
介護予防給付によって在宅の高齢者が現在の生活を維持し、自立した生活を続けていくために、何が必要なのか、地域で何をすべきか、おおいに考える時期がきている。
介護福祉士 広瀬志津代