ダム再考・水再考 

〜八ッ場(やんば)ダムを検証〜

 八ッ場ダムは東京・埼玉・千葉・茨城・群馬への都市用水の供給の安定確保と洪水対策を目的に計画された多目的ダムです。長野県の「脱・ダム宣言」からダムの必要性が再度問われているなかで、東京都はこのダムに対する事業費負担を都議会に提案しています。しかし、本当にダムは必要なのでしょうか?

事業主体は国土交通省
 八ッ場ダムは利根川総合開発計画の一環として、利根川水系吾妻(あがつま)川中流の群馬県長野原町に建設がすすめられています。これは利根川水系の上流ダム群とあいまって下流部の洪水被害を軽減、水資源の有効利用として首都圏の都市用水の開発を行うものです。このダムができると利根川水系では3番目に大きいダムとなります。

洪水被害対策は「山の保水力」で
 1947年のカスリーン台風や100年に一度、大洪水が起こるであろうという事をもとに、計画が立てられています。しかし、直近の50年以上前の大洪水は戦時中の森林伐採がもたらしたものです。現在、水源地の森林は成長し「緑のダム」機能(山の保水力)が向上しています。当時のような大洪水が起こる可能性は極めて少なく、治水面からの八ッ場ダムは不要であると言えます。

東京の水は足りている
 人口集中により高い水需要があると考えられてきましたが、都市用水の増加は1990年頃までの事で、最近では、トイレや洗濯機など節水型機器が開発され広く普及しています。その上、水道管の漏水防止も功を奏し、給水量は漸減しております。さらに、今後は人口も減ると予測され、水余りは確実です。また、渇水時の対策についても夜間の給水制限で水圧を下げる等の対応と節水で、断水せずに乗り切れることは明らかです。

一人1万円を超える都民負担
 八ッ場ダムの事業費は1985年時点の計画では2110億円でしたが、既に関連事業という形で1350億円以上が投じられています。しかし、今回の計画では大幅に事業費が引き上げられ、様々な関連事業費等を含めると8000億円を超えるといわれています。これにより東京都の分担金は赤ちゃんからお年よりまで、都民一人当たり1万円を超える大きな負担となります。
この出費は国と地方自治体の財政難が深刻になる中で、無駄な公共事業として更に財政を圧迫することになります。

自然破壊の代償は大きい
このダム計画は1950年にスタートしましたが、地元をはじめとする激しい反対運動が続き、ようやく1987年に基本計画が作られました。結果、工事は大幅に遅れ、未だダムの本体工事に至っていません。水余りといわれ、「都市用水の安定供給」の必要性はなくなったにもかかわらず、耐用年数50年のダム建設計画が、50年の月日を経てようやく再生した「緑のダム」を再度破壊することと引き換えにされようとしています。

都市用水は足りています。緑のダムも再生しました。財政難は深刻です。世界の国々は環境保全のための行動計画を立てて実行しています。
みなさんはどのように考えますか?
                              室井 泰子