プラスチックごみを清掃工場で燃やしたら!?  

 − 「松葉のダイオキシン調査2010.3報告集会」参加報告 −

 東京都23区内では2008年度から廃プラスチック混合焼却が導入され、実施前廃プラスチックの混入率は5%程度でしたが、本格実施後は15〜20%へと増加しています。
23区南生活クラブ生協では廃プラ焼却実施前に行なった「松葉調査結果」との比較を行なうため、2007年3月と同じ地域について、松葉を用いたダイオキシン類および金属類の調査を行いました。(報告集会調査報告者 (株)環境総合研究所 池田こみち氏)

松葉でダイオキシン調査 
通常、大気中のダイオキシン測定は年間数日しか行なわれません。しかし、大気中濃度は風向・風速といった気象条件や焼却炉の稼動状況、焼却物の組成などによって大きく変化します。
 松葉は従来から大気中の大気汚染、重金属などの測定分析の環境指標として活用されています。常緑のクロマツは大気中のダイオキシンを蓄積し、大気中の平均濃度によって松葉中濃度が上下するので、地域の大気の平均濃度を測定するのに最適です。
 「大気」と「松葉」との濃度の比は(単位が異なりますが)ほぼ1:10なので、松葉の濃度を測れば、大気の長期平均濃度が測定でき環境基準との比較を行なうことができます。
 2010年3月に前回調査と同じ地点でクロマツを採取し、その地域全体の平均となるようにブレンドして検体とし、カナダの測定分析機関に依頼しました。
調査地域:世田谷区東部・西部、世田谷清掃工場北側・南側、目黒区、大田区東部・西部、
京浜島、品川区、江戸川区、江東区、江東区臨海部、江東区清掃工場周辺
調査項目:ダイオキシン類、金属元素類12項目(EUの焼却炉排ガスに対する規制項目) 

廃プラスチック類の焼却に伴う環境への影響は・・・ 
大気中のダイオキシン類の発生源はたばこの煙や車の排気ガス・ごみの焼却などで、都市部では焼却炉の影響が大きいと言われています。調査の結果、焼却炉由来のダイオキシン類の濃度が廃プラ焼却前に比べて、多くの地域で増えており、特に目黒区全域、世田谷工場北側、大田区東部地域、品川区で上昇しています。
(図:松葉のダイオキシン調査2010.3報告集会 資料より ダイオキシン類:ポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン(PCDD),ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の毒素等量濃度 )
  2006年度(事前調査)と2009年度(事後調査)の毒性等量濃度の比較
 濃度分布では目黒、世田谷、品川区などが低く、江東、江戸川区が高い傾向は変わりませんが、目黒、世田谷、品川、大田区では全体的に濃度が上昇し、特に大田区東部から世田谷区東部に高い濃度上昇のエリアが広がっています。目黒区では隣接する渋谷清掃工場の影響、世田谷区は環状八号線でつながっている練馬、杉並の清掃工場の影響なども考えられます。
 金属元素類については、東京二十三区清掃一部事務組合の調査でもプラスチック製品に金属類の含有が明らかになっており、プラごみ類焼却では高濃度の金属類が検出されています。今回の調査でも、廃プラ焼却前に比べて、金属類の濃度は上昇しており、焼却炉周辺の濃度が高い傾向が見られました。

東京はダイオキシン濃度が高い!? 
松葉調査により、都内の大気中ダイオキシン類濃度は全国平均の2〜9倍の高濃度で、焼却炉由来の特徴を色濃く示しており、ヨーロッパの諸都市と比べても数倍高いことが明らかとなりました。

焼却炉を減らそう!
大気はつながっていて、私たちは自分の吸う空気を選ぶことはできません。安全な大気と資源循環のためにもごみの焼却は最小限に抑えるべきです。特にプラスチック類はリサイクルしやすい仕組みを作る必要があります。23区内で排出するごみは減少傾向にありますが、更に排出抑制を促し、脱焼却・脱埋め立てを目指さなければなりません。これから建て替える焼却炉の削減は当然と言えます。