「これから大人になる子どものためのお金講座」報告

ー講師:あんびるえつこさん 2006.3..15開催ー

 あまり馴染みのない「金銭教育」とは、消費者教育やキャリア教育の土台となるものです。現在の子どもを取り巻く社会環境や経済環境は、金融の自由化、IT化(決済の電算化により見えないお金)、そして自己責任が課せられ、私たちの子ども時代とは全く異なったものとなっています。多重債務者は日本人の60人に1人となっていて、消費者問題が深刻化しています。また、大手消費者金融5社の新規利用者の42.3%が20才代という数字も出ています。この背景のひとつに少子化という社会状況があります。近年の子どもは8つのポケット(両親、両祖父母、おじ、おば)を持ち、欲しいものを簡単に手に入れることができます。そのため、成人してもお金が不足したら、消費者金融から調達すればいいんだと安易に考えてしまうのではないかという分析もされています。将来困ったことにならないように、子どもにはお金のことをきちんと学ぶ機会が必要です。
そこで、おこづかいを渡し始める小学生の時期が、絶好の金銭教育のチャンスとなります。まず、おこづかいは子ども費の一部を権限委譲するものと考え、「やりくりさせ、不足しても補填しない」「欲しいものより、必要なものを優先させる」「計画的に使うことを学ばせる」「貯蓄を促す」ことから始めます。また、予算を立てるなかに寄付を加えるようアドバイスするのも大切な事です。
 また、きちんと働くことで収入を得るのだということを伝えなくてはなりません。子どもたちは親からの相続や芸能などの特殊な職業の人ほどお金持ちだという誤った認識を持っていますが、1日8時間以上働く人がお金持ちになっている割合が高いというデーターあります。収入は労働の対価として受け取ることができるのです。現在は様々な働き方がありますが、(*)フリーターやニートが正社員と生涯収入にどれほどの差があるのかもきちんと伝え、選ぶことができるようにするべきです。みんなが働き、税金を納めることで国の財政も安定しますし、支えあうしくみも更に充実するのです。
この金銭教育の目標は、おこづかいを利用して経済を学びながら、使いたいだけ使っていたら、お金もそして地球資源もなくなってしまうのだということを、子ども(次の世代)に伝えていくことにあります。持続可能な社会を実現するためには、私的な意思決定ができる「賢い消費者」と公的な意思決定ができる「賢い市民」を育てていかなくてはならないのです。
(*)          平均年収      生涯賃金        年金額(年)
    正社員      387万円     2億1500万円      14万6000円
    フリーター    106万円       5200万円       6万6000円
 
 今回の講演を企画して、改めて「持続可能な社会の実現」の重要性を痛感しました。環境・経済・教育・福祉の全てに共通した大切なキーワードとして、今後も活動をすすめていきます。